ひきだし

映画の曲の題から、何が分かるのか

第1183話まで読んで書いています

先に結論考察

曲の題が、あらすじではなく場面の名

  • 音楽の題というより、絵コンテの見出し
  • 同じ旋律が、版ごとに作り変えられている
  • 作曲のクレジットまで変わる
  • 手が入るのは、旋律ではなく仕立て直し
  • 題を順に読むと、映画のあらすじになる

この記事で、まだわかっていないこと 3

ここから先は、映画の中身に触れる。 曲の題を扱うので、 読んでいると場面の順が分かってしまう。まだ観ていない人は、ここで戻ってほしい。


映画のサウンドトラックは全52曲ある。 事実(サウンドトラックのクレジット) 二枚に分かれていて、公開の日に出た。

眺めていて、ふつうの劇伴と違うところがあった。 曲の題が、ほとんど場面の名前になっている。

「島二郎登場」「セイレーンの嘆き」「決戦前夜」「出航の朝」「家路へ」。

考察/ここまでで言えること

音楽につける題というより、絵コンテの見出しに近い。

劇伴の題は、ふつう曲のほうを指す。速さ、調子、気分。 ここでは、鳴る場所の名前が付いている。

そのせいで、このサウンドトラックは曲の一覧でありながら、場面の一覧になっている。 音を聞かなくても、どこに音が付いたかが分かる。

順に並べると、あらすじになってしまう

ここで一度手を止めた。

52の題を発売順にそのまま書き写すと、 それは映画のあらすじそのものだ。

「何が起きたか」ではなく「どこを見るか」を書く場所だからだ。

かわりに、原作の回とつながるところだけを取り出す。

原作の回と、まっすぐ結べるもの

曲どこで作詞作曲仕立て直し歌歌詞聞く
くつずれオープニングナガノトクマルシューゴトクマルシューゴ/上水樽 力ハチワレ(田中誠人)読む公式
机さするエンディングナガノトクマルシューゴトクマルシューゴ/上水樽 力ちいかわ(青木遥)読む公式
島のうた島の歓迎から見送りまで—トクマルシューゴトクマルシューゴ/上水樽 力島民—公式
島のうた(セイレーンver.)セイレーンと人魚が歌う場面—トクマルシューゴ/上水樽 力トクマルシューゴ/上水樽 力セイレーン(鈴木みのり)/人魚(大木咲絵子・七瀬彩夏)—公式
島のうた(セイレーンのアカペラver.)決戦前夜のあと—トクマルシューゴ/上水樽 力トクマルシューゴ/上水樽 力セイレーン(鈴木みのり)/人魚(大木咲絵子・七瀬彩夏)—公式
島のうた(島二郎ver.)出航の朝のあと—トクマルシューゴ/上水樽 力トクマルシューゴ/上水樽 力島二郎(最上嗣生)/島民—公式
うさぎラップ(ソロver.)うさぎが返した歌—トクマルシューゴトクマルシューゴうさぎ(小澤亜李)/人魚(大木咲絵子・七瀬彩夏)—公式
うさぎラップ(リズム感のある者たちver.)三つそろって乱しにいく場面—トクマルシューゴトクマルシューゴうさぎ(小澤亜李)/モモンガ(井口裕香)/人魚(大木咲絵子・七瀬彩夏)—公式
今日の日はさようなら(ハチワレver.)かがり火の夜金子詔一金子詔一トクマルシューゴハチワレ(田中誠人)読む公式
今日の日はさようなら(合唱ver.)同じ夜の、声がふえたほう金子詔一金子詔一トクマルシューゴ/上水樽 力ハチワレ/シーサー/島二郎/島民読む公式

このうち、原作の絵で同じことが起きている回がある。

曲本編で同じことが起きている回
うさぎラップ(ソロver.)第715話
うさぎラップ(リズム感のある者たちver.)第754話・第756話
今日の日はさようなら(ハチワレver.)第779話
今日の日はさようなら(合唱ver.)第781話・第782話

本編の台詞にそのまま出てくる。 事実(第754話) 作戦を立てる場面で、三つが名指しされる。 映画の曲名は、そこから取られている。

「今日の日はさようなら」は、かがり火をかこむ夜の回にあたる。 事実(第779話) この曲の題は、単行本第8巻の章の題にもなっている。 本の章名と、映画の曲名が、同じ実在の曲の題を指している。

「Adapter」という見なれないクレジット

このサウンドトラックには、作曲とは別に Adapter(アダプター)という欄がある。 事実(サウンドトラックのクレジット)

同じ旋律を、場面ごと・歌い手ごとに仕立て直す役だと説明されている。 編曲に近いが、編曲とは別に立っている。

これがあるおかげで、どの版を誰が作り変えたかが追える。 「島のうた」はひとりの作曲で、その一部の版だけ二人の共同作曲だ。 同じ旋律なのに、作曲のクレジットが変わる。

考察/もう少し先まで読むと

手が入っているのは、旋律ではなく仕立て直しのほうだ。

同じ節が、歌い手ごと・場面ごとに別の姿で出る。 本編でも同じことが起きていた ── 同じ節が、沸く客席と静まる客席の両方を作る。

歌の意味が歌の側で決まらないことが、 音のクレジットの立てかたにまで出ていることになる。

Adapter という欄が立っているのは業界の習わしでもある。 巷の説

二人の音楽家

音楽は二人で担当している。 事実(公式サイト)

ひとりは、テレビアニメからずっと音楽をやってきた人で、 百を超える楽器と、楽器でないものを自分で鳴らして曲を組む。 アニメが始まったとき、「少し変わった音楽」と自分で言っていた。

もうひとりは、作曲家でピアニスト。 古い短編アニメーションの音楽を研究して博士号を取っているという経歴がある。 絵の動きに音をぴたりと合わせる書きかたを、研究のほうから通ってきた人だ。

クレジットを見ると、歌ものと日常の場面には前者の名が多く、 戦いと島二郎の場面には後者の名が目立つ。 事実(サウンドトラックのクレジット) ただしAdapterには二人の名が並ぶ曲も多いので、 きれいに分かれているわけではない。

音楽が、物語をどこまで知っていたか

「この音楽は、物語のどこまで知っていたのか」について。 巷の説

A 音楽が、物語の構造をそのまま引き受けている

同じ旋律が場面ごとに姿を変える。 歌い手が減れば響きも減る。話の状態が、そのまま音の状態になっているという読み。

この立場では残るもの。 引き受けているかどうかは、 聞いた側の受け取りでしかない。作り手がそう言った場面は出てこない。

B 原作の場面が、もともと音楽的にできていた

原作にはもともと歌の回が多い。 事実(第666話) 歌が力を持つ設定も、コーラスがそろわないと弱まる理屈も、原作にある。 事実(第756話) 音楽で語れる材料が、はじめから置かれていたという見かた。

この立場では残るもの。 それなら、なぜ版が七つも要ったのか。 原作の歌の場面は、それより少ない。

C 曲の題が場面名なのは、ただの作業の都合

劇伴は場面ごとに発注される。題が場面名になるのは、 作りかたの都合であって、読みの材料ではない、という立場。

この立場では残るもの。 それでも公開されている。 作業用の名前をそのまま商品に出すかどうかは、選ばれている。

この読みの、弱いところ

こちらは映画を見ていないので、曲の題と原作を結べたのは四つになる。

52曲が唯一の区切りかただ、という読みは、本文も飛躍だと書いている。 二人の分かれかたも、きれいに分かれていないと本文に書いてある。

ここから先は推測

52という数を、原作の側から見てみる。

島の編にあたる原作の回は、島へ渡る話から見送りまで 百回を軽く超える。 それが52曲に畳まれている。

畳むときに、何を一曲にまとめ、何を別の曲に分けるか。 その分けかたは、映画が原作をどこで区切ったかの記録だ。 公式は「第何話から第何話まで」を出していない。 だとすると、いま公になっている唯一の区切りかたが、この52曲だということになる。

これは飛躍だ。 曲の分けかたは音楽の都合でも決まる。 盛り上がりの位置と、話の切れ目は同じではない。

それでも、原作のどこがどう扱われたかを知る手がかりが ほかに無いのは本当だ。

題だけが、公になっている

映画の公式は、原作のどこにあたるかを書いていない。 原作の絵と映画の場面も、突き合わせられない。

そのあいだにあるのが、52の題だ。 場面の名前がついた曲が、発売の順にならんでいる。

そこから分かるのは、どの場面に音がついたか、までだ。 どんな音だったかは、聞いた人しか知らない。

まだわかっていないこと

  • どの曲が映画のどの場面で鳴るのか。題から並べただけで、上映と突き合わせていない。突き合わせる相手が無いので、確かめる道が無い

    確かめる道が無い 上映と突き合わせる相手を持っていない。手がかりになるのは題とクレジットだけで、どの場面で鳴るかは映画を見ないと出ない

  • 原作に無い場面のための曲があるか。題の中に、原作の回と結べないものが残る。そこが原作の外か、結べていないだけかは、いまは分けられない

    確かめる道が無い 原作の回と結べない題が残るが、それが原作の外なのか、結べていないだけなのかは、映画を見るまで分けられない

  • 曲の題を誰が付けたのか。クレジットに欄が無い。アニメの各話の題も同じで、誰が付けたかはどちらも公になっていない

    確かめる道が無い クレジットに、題を付けた者の欄が無い。アニメの各話の題も同じで、どちらも公になっていない

この記事の方針

  • 「事実」は、絵か公式の投稿で照合できたことだけ。確かめた話数を添えています。
  • ファンのあいだで語られているものは「巷の説」、このサイトの読みは「考察」と分けています。
  • 根拠の薄い読みは「ここから先は推測」の節に分けています。
  • あらすじの再構成と長い引用はしていません。歌詞は一行も載せません。

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