ひきだし

歌を止めるのに、なぜ歌を使うのか

第1183話まで読んで書いています

先に結論考察

条件だけが分かって、理由が分からない

  • 説明しない作品が、ここだけ二回説明する
  • 説明されたのは、効きめと条件だけになる
  • それでも作戦は立つし、実際に効く
  • うさぎの声は同じで、受け取る側が変わる
  • 島でだけ、それが歌として扱われる

この記事で、まだわかっていないこと 3

この作品は、ほとんどのことを説明しない。 討伐がなぜあるのかも、鎧の下に何があるのかも出てこない。

歌のところだけ、条件まで言葉にされる。 しかも、その条件を使った作戦が立てられ、実行される。

力があることが、先に言われる

第711話。大きな口が開き、緑のつるが一気に伸びて住人を囲む。 事実(第711話) そのとき、こう名指しされる。

セイレーンの不思議な歌の力

効きめが先に出て、理由は出ない。 ここまではこの作品らしい。

条件のほうが、二段階で出てくる

第714話。 逃げているあいだに、つるの伸びが鈍る。 事実(第714話) 理由がその場で言われる。

メインボーカルのセイレーンと離れたからだ!!

離れると弱まる。位置の条件が一つ出た。

第756話。 今度はもっとはっきりする。 事実(第756話) 歌っている側が、仲間にこう言う。

コーラスちゃんとしてッ!!

そして、見ていた側が理屈をまとめる。

歌の力は弱まる

そろわないと弱まる。編成の条件が出た。

離れると弱まる。位置の条件。 事実(第714話) そろわないと弱まる。編成の条件。 事実(第756話)

考察/ここまでで言えること

説明しないことで成り立っている作品が、ここだけ二回説明している。

この作品は、討伐がなぜあるのかも、鎧の下に何があるのかも出さない。 級を決めた者も、報酬の値を付けた者も出てこない。

そのなかで、歌のところだけ条件まで言葉だ。

しかも、説明されたのは効きめと弱まる条件だけだ。 なぜ歌に力があるのかは、一度も出てこない。

そこへ、うさぎの声が入る

第715話。岩のあいだから歌声が聞こえてくる。 事実(第715話) うさぎがそれに応じて、ハ行とラ行のまじった声を返す。 聞いていたハチワレが言う。

それってラップ!?

すると、水の中の者たちがつられて合わせはじめる。 そして、伸びていた緑が止まる。

うさぎは戦っていない。いつもの声を出しただけに見える。 けれど結果として、相手の編成が崩れた。

作戦として組み直される

第754話。追いつめられた場面で、作戦が出る。 事実(第754話)

リズム感のある者たちッ

名指しされたのは三つ。うさぎと、モモンガと、くりまんじゅうだ。 声を出すことが、役として割り当てられている。

第756話では、その三つが実際に乱しにいく。 事実(第756話) つるの動きが鈍くなったところで、料理の支度が始まる。

映画のサウンドトラックには、この場面にあたる曲が 二つの版で入っている。ひとつきりで返す版と、三つでやる版だ。 事実(サウンドトラックのクレジット) 曲名に「リズム感のある者たち」がそのまま使われている。 本編の台詞が、そのまま曲の題になっている。

うさぎの声は、もともと歌ではない

ここで確かめておきたいことがある。

うさぎの「ウラ」は、歌として描かれてきたわけではない。 第26話ではその場でまわりながら叫んでいるだけだし、 事実(第26話) 第158話でも、草むらの中で声を上げているだけだ。 事実(第158話) 音符もつかない。

考察/もう少し先まで読むと

うさぎの声は変わっていない。受け取る側が変わっている。

島でだけ、それが歌として扱われる。 ハチワレが「ラップ」と呼び、相手がコーラスとして受け取る。 事実(第715話)

これは、この作品でくり返し出てくる形になる ── 同じ語が遊びと取り締まりを担い、同じ節が歓迎と討伐の両方で鳴る。 ものの意味が、ものの側で決まらない。

うさぎの声も、受け取られかたで役が変わっている。

よく言われている説

「なぜうさぎの声が効いたのか」について。 巷の説

読み1 合わないから乱せた

相手はそろえて歌う者たちで、そろわないと弱まる。 事実(第756話) そこへまったく合わない声が入れば、そろわなくなる。 効いたのは中身ではなく、合わなさのほうだ、という読み。

この読みだと説明できないこと。 相手が合わせにいっている。 事実(第715話) 合わない声のはずなのに、真似をされている。 合わなさが効いたのなら、真似される理由がない。

読み2 つられてしまう側の性質

歌う者たちのほうに、聞こえた音に合わせてしまう性質がある、という読み。 歓迎の場でも、屋台の呼び声をそのまま歌っていた。 事実(第680話) 覚えて返すのが、もともとの振る舞いだったことになる。

この読みだと説明できないこと。 それなら誰の声でも効く。 なぜ三つだけが名指しされたのかが残る。

読み3 力の出どころが、そろっていることのほうにある

歌の中身に力があるのではなく、そろって鳴っている状態に力がある。 だから、そろいを崩せば止まる。中身は関係ない。

この読みだと説明できないこと。 ひとつきりで歌う場面でも効いている。 事実(第710話) そろう前から、つるは伸びている。

この読みの、弱いところ

条件の出る回は二つ、声が効く回は二つを引いている。

同じ種類のものしか届かない、という読みは、本文も飛躍だと書いている。 中身なしで回っている、という線は、ほかの仕組みを並べたところから出ている。

ここから先は推測

この編で使われた武器を並べてみる。 手渡された道具があり、料理があり、そして声がある。 事実(第688話)

そのうち、相手に届いて効いたのは声だけだった。 道具のほうは、当たっても壊れる。 事実(第714話)

ここからこう読める。

この相手には、同じ種類のものしか届かない

歌で来る相手には歌で。討伐の形をしていない討伐が、 この編でだけ成立している。

これは飛躍だ。 料理のほうも効いている。 最後にどう終わったかは、並べきれていない。

説明されたのが、ここだけだった

この作品で、仕組みが言葉になった場所は少ない。 そのうちのひとつが、歌の力だった。

考察/いちばん先まで読むと

条件だけが分かっていて、理由が分からない。それでも作戦は立つし、実際に効く。

分からないまま使えてしまう。

そして、この形はこの世界のほかの場所とそろっている ── 級の中身は分からないのに、取れば報酬が上がる。 資格が何を守るのかは分からないのに、取り締まりは機能する。 番号が何を数えたのかは分からないのに、順位は動く。

この世界の仕組みは、どれも中身なしで回っている。 歌は、そのいちばんはっきりした例だ。 効きめだけが言葉になって、理由の欄が空いたまま使われている。

まだわかっていないこと

  • 歌に力がある仕組み。一度も出てこない。効きめと条件は言葉になっているのに、そこだけが空いている

    絵を開いた 事実(第761話) 効きめのほうだけ、言葉になっていた。第761話で、とどめの一撃…、これで歌声は完全に封じた!!…ケド…、と言う。封じた、という結果は画面に出る。なぜ歌で歌が止まるのかは、この回でも言われない。効きめと条件が言葉になって、そのあいだが空いている

  • うさぎの声がなぜ相手の歌を乱せるのか。合わないから乱せたのか、つられる側の性質なのかで読みが割れる。相手が真似をしている点が、前者に引っかかる

    確かめる道が無い 合わないから乱せたのか、つられる側の性質なのかは、絵からは分けられない。相手が真似をしている点が前者に引っかかる、というところまでになる

  • 乱すことをうさぎ自身が分かっていたのかどうか。いつもの声を出しただけに見える。あとの回で作戦として名指しされるので、少なくとも二度目は分かっていることになる

    絵を開いた 事実(第158話) 初めのほうは、向けて出していなかった。第158話で、つるにぶらさがって遊ぶうちに声が出て、そのあとで相手が現れ、オーッ なんだァ おまえ、と言う。声が先で、相手が後だ。作戦として名指しされるのは、これより後の回になる

この記事の方針

  • 「事実」は、絵か公式の投稿で照合できたことだけ。確かめた話数を添えています。
  • ファンのあいだで語られているものは「巷の説」、このサイトの読みは「考察」と分けています。
  • 根拠の薄い読みは「ここから先は推測」の節に分けています。
  • あらすじの再構成と長い引用はしていません。歌詞は一行も載せません。

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