ひきだし

拒むときに、理由を言わないのはなぜか

第1183話まで読んで書いています

先に結論考察

拒む声には、もともと理由が付かないから

  • 理由が付くのは、求める声のほうだけだ
  • 拒む声は、いろいろな者が出す
  • 理不尽を言葉にする材料はそろっている
  • 体が変わる回も、通らない試験の回もある
  • それでも、なぜ自分が、が出てこない

この記事で、まだわかっていないこと 3

拒む声は、よく出てくる。 早い時期の回で「ヤダヤダ」「イーヤー」と返している。 事実(第67話) 三年たった回でも、同じ二つが並んで出てくる。 事実(第733話)

拒めないわけではない。

出てこないのは、別のものだ。 「なぜ自分がこうなるのか」にあたる言い回しは、出てこない。

拒む声は、形が決まっている

第67話で返ってくるのは「ヤダヤダ」と「イーヤー」だった。 事実(第67話) 第733話は、檻に入れて暗いところへ、という話をされた場面だ。 そこで返るのも「ヤダヤダ」と「イーヤー」だった。 事実(第733話)

場面はまるで違う。前者は取り合いで、後者は身の上の話だ。 同じ二つが、同じ並びで出る。

別の回では「ヤダーッ」から始まって、「イヤッイヤッ」と続き、 「言わないでしょ そんな事ッ」まで行く。 事実(第835話) ここは長い。それでも、言っているのは嫌だということだけだ。

求める声のほうには、理由が付いている

一方に、求める声がある。

「返せッ」が大きな字で四回くり返される回。 事実(第67話) 「よこせッ」「よこしなッ」が並ぶ回。 事実(第891話) 「要求ッ…」という字が、絵の中にそのまま出てくる回。 事実(第1164話) そこでは「もっと拍手とかしろッ」と言い、最後に「褒めろッ」と言う。

第891話は、そこから先がある。

約束だろ?

前にあったことを持ち出している。 同じ回に「あの夜ごちそうをいただいたじゃないか」という言い分も出てくる。 そのうえで「両方よこせ」になる。

これは、ただ欲しいと言っているのとは別のことになる。

何が分かれているのか

例理由を付けるか
拒むヤダヤダ/イーヤー/イヤッイヤッ付かない
求める返せッ/よこせッ/褒めろッ付く(約束だろ?)

理由づけが、片側にしかない。

考察/ここまでで言えること

分かれ目は「言うか言わないか」ではなかった。

拒む声は、いろいろな者が出す。三つがいる場でも出るし、叫びとしても出る。 拒めないわけではない。

理由が付くのは、求める声のほうだけだ。 「約束だろ?」と、前にあったことを持ち出す回がある。 事実(第891話) 過去を根拠にして、いまを正しいことにしている。

拒む側は、そこをしない。「ヤダ」で終わる。

読みは、いくつかに分かれる

ひとつめ。役どころが分かれている。 求める声は、絵で当てたかぎりで同じ一つに寄っている。 第67話・第615話・第881話・第891話・第1164話は、どれもそのキャラが出る回だ。

この読みが取りこぼすもの。拒むほうは分かれていない。 第47話では三つがいる場で「ヤダー」が出るし、 第1028話でも「ヤダー」という叫びが出る。 役どころで分けるなら、拒むほうも分かれていないと合わない。

ふたつめ。言葉の量が違う。 ちいかわは言葉が出ないときがある(別の考察で扱っている)。 理由を立てるには言葉が要るので、出せる者しか出せない、という読みだ。

この読みが取りこぼすもの。ハチワレはよく喋る。 第835話では長い拒みかたをしているのに、そこでも理由は付かない。 言葉の量だけでは説明がつかない。

みっつめ。理由を言った時点で、場面が終わってしまう。 「なぜ自分が」は、答えが返ってこないと収まらない問いだ。 この作品は説明をしないので、収まらない問いを出すと回が閉じない。

この読みが取りこぼすもの。第891話は、理由を言ってもまだ続く。 「約束だろ?」のあとに何度もやりとりがあって、そのうえで終わる。 理由が場面を止めるわけではない。

この読みの、弱いところ

拒む回は四つ、求める回は三つを引いている。

理由が付くのは求める声のほうだけ、と言うには、 どちらの回も拾いきったことが要る。 語彙が一つぶんしか配られていない、という読みは、本文も飛躍だと書いている。

ここから先は推測

三つとも、片側しか説明できていない。

考察/もう少し先まで読むと

理不尽を言葉にする材料は、そろっている。

体が変わる回があり、檻の話をされる回があり、通らない試験がある。 言葉にする材料はそろっている。

そのうえで「なぜ自分が」が出てこないなら、読みかたは逆になる ── 理不尽を言葉にする語彙が、この世界では一つぶんしか配られていない。 求める者はそれを持っていて、拒む者は持っていない。 だから拒むほうは、いつまでも「ヤダ」の形のままでいる。

ここは飛躍だ。 語彙が配られていないのか、 たまたまそういう回が描かれていないだけなのかは、分けられない。

考察/いちばん先まで読むと

この読みは、この作品の読まれかたを一つ裏返す。

巷では、この作品を抗議の無い世界として読む向きがある。 巷の説 声を上げない、受け入れてしまう、という読みだ。

絵はそう言っていない。 拒む声はいくらでも出る。 出ないのは、拒む理由だ。

つまり、無いのは抗議ではなく抗議の形だ。 声はあって、形が無い。

まだわかっていないこと

  • 「なぜ自分が」にあたる言い回しが、どこかの回にあるのか

    絵を開いた 事実(第47話) 開いた回には無かった。拒む声は出る(第47話・第674話・第835話・第1028話の ヤダー、イヤッ)。嘆く声も出る ── 第47話で、これじゃもうチャリ…ル…メラ食べれないよ!!、泣いても涙が出ないや、と言う。姿を変えられた直後でもこの形だ。なぜ自分が、にあたる言いかたは一つも出てこない

  • 理由を立てて求める者が一つに寄っているのが、見落としでないか

    数えた 理由を立てて求める側とされるモモンガは125話しか出ず、相手は年ごとに入れ替わる(2024年は古本屋と同じ回が9、2025年はラッコと6、2026年は古本屋と4)。一つに寄って見えるのは、出る回が少ないぶん目立つからかもしれない

  • 同じ言いかたを使うのに、通る回と通らない回があるのはなぜか。形が同じなので、差は言いかたの側にない

    絵を開いた 事実(第835話) 拒む回をキャラごとに開いた。形はキャラをまたいで同じだ。白い者は第47話で、ヤダーッ、と叫び、第835話でも同じ形が画面いっぱいに出る。白い体に水色のたてがみの者は、第67話で、ヤダヤダ、第674話で、イーヤー ヤダヤダ、第1160話でも、ヤダーッ。黄色い者だけは、ヤハ・ウラ の音で拒む。キャラごとではなく、作品ぜんたいで同じ形になっている

この記事の方針

  • 「事実」は、絵か公式の投稿で照合できたことだけ。確かめた話数を添えています。
  • ファンのあいだで語られているものは「巷の説」、このサイトの読みは「考察」と分けています。
  • 根拠の薄い読みは「ここから先は推測」の節に分けています。
  • あらすじの再構成と長い引用はしていません。歌詞は一行も載せません。

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