ひきだし

かわいさとこわさが、同じ絵の中にあるのはなぜか

第1160話まで読んで書いています

先に結論

  • 住人が「討伐するのが正しいんだよね?」と聞く回がある 確認済(第755話
  • 牙と角のあるものが「返せ」と言う回が、初期からある 確認済(第66話
  • 鎧さんが「擬態型」を警戒して心配する回がある 確認済(第201話
  • こわいものと、そうでないものの境目は示されていない 未確定

この記事で、まだわかっていないこと 4

3年半のあいだに、問いが動いている

この作品の「こわさ」は、よく落差として語られる。 かわいい絵の中に急にこわいものが出てくる、という驚きの話だ。

けれど1160話を順に並べると、こわさの扱われかたが動いているのが分かる。 三つの回を並べてみる。

2020年8月 ── こわいものは、しゃべっている

第66話。牙と角のある黄色い生きものが出てくる。 大きく口を開け、長い舌を出している。 確認済(第66話

言っていることは「返せ」だ。 モモンガに取られたものを返せと言っている。

こわい見た目のものが出てきて、言っているのは正しいことだった。 初期の段階で、すでに見た目とふるまいが一致していない。

2021年3月 ── こわさは、心配の材料になる

第201話。鎧さんが栗まんじゅうを見て、「擬態型」ではないかと疑う。 確認済(第201話 そして、食べられそうになっていないか、 凶暴なところを見ていないかと確かめている。

ここでは、こわさは驚きではなく警戒のしかたとして出てくる。 擬態型がいるという前提が、この世界の日常に入っている。

2023年10月 ── 住人が、討伐を疑う

第755話。セイレーンの目がうずまきになり、姿が変わる。 そのとき、住人がこう言う。 確認済(第755話

討伐するのが、正しいんだよね?

こわいものを前にして、こわいと言っていない。 言っているのは、こちらのやっていることは正しいのかだ。

この一行が、3年半のあいだで起きたいちばん大きな変化だと思う。

並べると、こう見える

こわいものの扱い住人の位置
第66話言い分がある巻きこまれている
第201話警戒の対象心配されている
第755話倒す相手疑いはじめている

こわさが増えたのではない。 住人との距離が変わっている。

語られている説

「なぜ同じ絵の中にあるのか」について。 ファン考察

説1 落差が効いている

いちばん多い読み。かわいいものの中に置くから、こわさが強く出る、という筋。 表現の技法として読む見方。

弱いところは、驚かせる作りになっていないこと。 こわいものが出る回も、他の回と同じ間で、同じ大きさで描かれる。 盛り上げも、ためもない。

この説だと説明できないこと。 第66話。 あの生きものは、驚かせるために出てきたのではない。 取られたものを返せと言いにきている。 落差を作りたいなら、言い分を持たせる必要がない。

説2 もともと分かれていない

この世界では、かわいいものとこわいものが同じ線で描かれている。 分けていないから同じ絵の中にある、という読み。

弱いところは、それなら「擬態型」という呼び名が要らないこと。 確認済(第201話 分けていない世界に、見分けるための言葉は生まれない。

この説だと説明できないこと。 第755話の問い。 分かれていないなら、討伐が正しいかどうかを疑う理由がない。

説3 分けているのは読者のほう

住人はこわがっていない、という読み。 こわいと思うのは外から見ている者で、中にいる者にとっては日常だ、という見方。

弱いところは、住人が明確にこわがる場面があること。 第201話で鎧さんは、危ない目に遭っていないかを本気で確かめている。

この説だと説明できないこと。 第755話。 住人自身が立ち止まっている。 日常として流していたら、あの問いは出てこない。

ここから飛躍する

ここから先は根拠が薄い。飛躍だと分かるように、節を分けて置く。 ファン考察

三つの回に共通しているのは、こわいものの側に何かがあることだ。

第66話の生きものには言い分がある。 第201話の「擬態型」は、見分けられるものとして名前を持っている。 第755話のセイレーンには、歌を奪われたという事情がある。

ここからこう読める。

こわいのは見た目ではなく、事情を知ってしまうこと。

見た目がこわいものは、この作品ではたいてい何かを言っている。 言い分を聞いてしまうと、討伐が単純でなくなる。 こわさは、倒しにくさに変わっていく。

これは飛躍だ。 事情が描かれないまま倒される回のほうが多いし、 三つとも島編に近い時期に寄っている。 作者が単に長く描くうちに厚みが出ただけ、という読みもできる。

それでも、第755話の一行を書いたのはこの作品自身だ。 外から「かわいいのにこわい」と言っているうちに、 中では「正しいのか」に進んでいた。

答えは、動いている途中にある

この問いの答えは、たぶん動いている途中にある。

2020年には、こわい見た目のものが正しいことを言っていた。 2021年には、見分けるための言葉ができていた。 2023年には、倒す側が手を止めて聞いている。

かわいさとこわさが同じ絵の中にあるのは、 分けられていないからではなく、分けかたがまだ決まっていないからだ ── と読むこともできる。

決まっていないものを、決まっていないまま置いておく。

まだわかっていないこと

  • 住人たちが、それをこわいと思っているのか 掘っていない
  • 姿を変えてしまう出来事が、なぜ起きるのか 掘っていない
  • 「擬態型」がどれくらいいるのか 掘っていない
  • 討伐される側に、言い分があるのかどうか 掘っていない

一つずつ、掘り進めていきます。埋まらないまま残るものもあります。

この記事の方針

  • 「確認済」と書けるのは、公式アカウントの投稿で照合できたことだけです。確認した話数を必ず添えています。
  • ファンのあいだで語られている説は「ファン考察」と明示し、事実と混ぜません。
  • 作中で説明されていないことは「未確定」のまま置きます。埋めません。
  • まとめサイトや考察ブログは、語られている説を知るために読んでいます。読んだ文章や表を写さず、自分の言葉で書き直しています。そこで見たことを「確認済」にはしません。
  • こちらで確かめられなかったことは、確かめていないと書いて出します。「よく挙げられるが、こちらでは確かめていないこと」の節がそれです。
  • 根拠の薄い読みを載せるときは、節を分けて「ここから飛躍する」と書きます。本文に混ぜません。
  • あらすじの再構成や、セリフの長い引用はしていません。歌詞は一行も載せません。